石州和紙の最大の特徴は「日本一丈夫な紙」と言われる強靭さ。
その昔、大阪商人が火事の際に石州半紙の帳簿を井戸に投げ込み、その後、引き上げて使ったという逸話があるように、耐久性や水漏れに非常に優れていることで知られています。その強さは千年もつといわれるほど。
原料の楮は地元産の良質の楮のみを使用しています。通常は和紙を白くするため、楮の内側の「白皮」部分のみを使用しますが、石州和紙では外側の「甘皮」部分まで利用します。そうすることで甘皮の繊維が良く絡みこみ日本一と言われる強度を持った和紙が生まれるのです。
強さの理由は製法にも隠されています。「溜め漉き」とは違い、「流し漉き」の技法では紙料液を漉き簀に入れ全体を前後に揺り動かすことで、繊維が均等に絡み強靭さが増します。また、漉いた和紙を天日でじっくり乾燥させることで、繊維同士をくっつける水素結合が促進され、強く耐水性にも優れた和紙になります。
石州和紙のもう一つの特徴は、上品な艶とオーガニックな風合い。楮の甘皮が和紙に微かな黄味を与えるため、光沢ありながら柔らかでオーガニックな色味になります。
このように、風合いよく強さに優れた石州和紙は、古くから書道紙や障子紙などの日用品を中心に使用されてきました。また、その丈夫さから神社仏閣の文化財修復、近年では、アートやクラフト材、また建築やインテリア材などへの使用が注目されつつあります。
平成元年(1989年)には、経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」に指定されました。
伝統的工芸品「石州和紙」の指定要件
石州和紙の主原料が楮、ミツマタ、雁皮であるところ、100%地元産の楮だけを使用し、技術技法も限定されたものを区別して「石州半紙」と呼びます。
2009年石州半紙は手漉き和紙で初めてユネスコ無形文化遺産に登録されました。その後、2014年に本美濃紙、細川紙と共に「和紙 日本の手漉和紙技術」でユネスコ無形文化遺産として再登録されました。
重要無形文化財「石州半紙」の指定要件